東京高等裁判所 昭和38年(う)1734号 判決
被告人 都築健一
〔抄 録〕
職権により調査するのに、原判決は、押収中の現金一〇万円(当裁判所昭和三八年押第六六四号の一五)は、「被告人が不法に所持する麻薬を譲り渡して取得した物件であつて被告人の所有に属する物件であるから、刑法一九条一項三号、四号の法意にかんがみこれを没収す」べきものとしてこれを没収する旨の言渡をしているが、没収は附加刑であるから刑法第一九条により没収することができるのは、当該判決において有罪とされ、主刑の基礎となつた犯罪行為と、同条第一項各号所定の関係ある物件であることを必要とする(最高裁判所昭和二九年三月二六日判決、刑集八巻三号三三七頁以下の趣旨参照)、ばかりでなく、原判示のように同条第一項第三号第四号に基いて没収することができるのは当該物件が、叙上の要件を具備する「犯罪行為より生じ、若くはこれに因つて得た物又は」その「犯罪行為の報酬として得た物」の「対価として得た物」である場合に限るのであつて、同条項第一号所定の「犯罪行為を組成した物」の対価として得た物の如きは、これを没収することができないものと解するのが相当であるところ、原審第一回公判調書中、被告人の供述記載及び被告人の当審公判廷における供述によれば、前記押収金一〇万円は、被告人が原判示第六の事実において昭和三八年一月九日営利の目的をもつて不法に所持したもの(麻薬取締法第六六、第六四条第一項、第一二条第一項の罪)として有罪の認定を受けた麻薬粉末約一〇〇グラムの一部をその翌日他に売却して得た代金、即ち、右麻薬不法所持の犯罪を組成した物件の対価として得た物であることを認めるに足りるので、叙上説示の趣旨に照らし、刑法第一九条第一項第四号(第三号)に基いてこれを没収することは許されないものと言わなければならない。されば原判決が「刑法第一九条第一項第三号、第四号(第二項)の法意にかんがみ」これを没収する旨の言渡をしたのは、同法条の律意を不当に拡張解釈してその適用を誤り没収することができないものを没収した違法があり、これが判決に影響を及ぼすことは明らかであるから、原判決はこの点において破棄を免かれない。
(小林健 遠藤 吉川)